Jul. 15, 2025 在留資格「経営・管理」は、外国人が日本で会社を設立し経営する場合、又は既存の事業に参画してその経営や管理を行う場合などに取得ができる在留資格です。
今回は、「経営・管理」の内、「経営」に該当するケースについて、許可要件や不許可事例、そして実務上の注意点をお伝えします。
在留資格「経営」の基本要件
- 日本国内に事業所を確保していること
・月単位の短期間で賃貸するスペースの利用は認められません。
・賃貸契約である場合、賃貸契約書などの写しを提出することによって、当該法人等の名義で契約がされ、当該法人等が使用することを明確にする必要があります。
・住居として使用している場所の一部を事業所とする場合、住居の一部を事業目的として使用することができる賃貸契約なのかを証明する必要があり、事業目的占有の部屋であり、設備等も備えられ、公共料金の支払いに関して明確な基準があることが必要とされています。
また、事業所の看板等を掲げることも必要です。
- 事業の経営又は管理について3年以上の経験を有すること
・経験年数には、大学院などで経営又は管理に係る科目を専攻した期間も含むことができます。
・日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けることも必要です。
- 日本に居住する2人以上の常勤職員を雇用するか、資本金の額又は出資の総額が500万円以上であること
・「常勤職員」とは、日本人、永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等を指します。
・労働関係法令を遵守していることも必要ですので、労働保険、社会保険に適切に加入、納付を行っているか、雇用している職員の労働条件が法令等に則しているかなども重要なポイントです。
許可が下りない可能性があるケース
- 経営に実質的に従事していない
・経営に実質的参画しており、運営に関する重要事項の決定、事業の執行などに従事する活動を行っている必要があります。
海外に在住している外国人が日本に会社を設立する場合、事務所の賃貸契約を行うこと、銀行口座を開設することが本人のみでは困難なため、日本在住の日本人もしくは他の外国人が会社役員として参画する場合が多くあります。
その場合、その他の人物が役員等として参画している理由の説明文を添付するなどして、日本人等のパートナーが経営を主導し申請者本人は経営に関わっていないのではないか、という懸念を払拭することが必要です。会社の規模や業務内容、役員もしくは従業員の人数などが適当か否かも確認されますので、納得のいく説明が必要になります。
- 事業計画の継続性、信頼性がない
・事業計画書には、既に契約している取引先を含め、見込み客、交渉中の案件なども記載し、それぞれの売上予測なども含めた、詳細で明確な内容の計画書を作成することが重要です。
・既に事業が開始されている場合、単年度において赤字決算になっていることのみをもって継続性がないとは判断されず、諸般の事情が考慮されます。赤字決算となっている場合、公認会計士や中小企業診断士等、企業評価を行う能力を有すると認められる公的資格を有する第三者によって、回復の見通しや根拠、資金調達の状況等を記載したものを提出することによって、状況回復に取り組んでいることを示すことが必要です。
- 資金の出所が不明確
・資本金の出所について、複数人が出資している場合、それぞれの金額を明確にする必要があり、出資者などが会社とどのような関係にあるのかも示す必要があります。
・資本金の払込証明書や海外送金計算書等を提示することによって証明することが可能です。
実務上のポイント
✔「経営実態」を客観的に示す資料が重要
・事業計画書において、事業内容の詳細や事業に関するこれまでの業務経験を示し、実際の取引先との取引内容や売上を示すと共に、従業員雇用人数を含めた今後の事業計画についても示すことが非常に重要です。
・ホームページやパンフレット等を添付することも有効な材料となり得ます。
✔ 経営又は管理に従事する者が複数いる場合の役割明確化
・各人が従事することになる具体的な業務内容、役員として支払われるとされる報酬額等は必ず明確にする必要があります。議事録等を添付することによって証明することが可能です。
✔ 日本で継続的に生活できることの証明
・海外在住の外国人が会社を設立したばかりの場合、資本金の出資について証明するだけでなく、自己所有の不動産や銀行口座などの自己資産を証明することによって、会社に何かあった時にも対処するためにある程度余裕があること、日本で生活を送るために十分な資産があることを示すことも役に立ちます。
最近、見せかけの経営・管理による申請が増えていると言われており、実際に経営・管理を行っているか、事業の実態という要件は厳しく判断されます。
在留資格「経営・管理」の「経営」は、会社を作るだけでは許可されません。日本で継続的に事業を営む意思と準備、そして実行力があるかどうかが問われます。
経営者としての実態、事業の将来性などを多角的に判断されるため、形式だけでなく中身のある準備が不可欠です。