変形労働時間制は、一定の期間において、一週間の平均労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、業務の繁閑に応じて労働時間を配分することができる制度です。
フレックスタイム制は、一定期間(清算期間)において、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、労働者が始業及び終業の時刻を自主的に決定できる制度です。
それぞれの制度の割増賃金計算は、原則的な1日8時間、週40時間(特例措置対象事業は除く。)を超えた時の算出方法とは異なります。
ではどのように異なるのかを、今回は説明していきます。
変形の期間の単位が、1箇月以内の期間(変形期間)または1箇月を超え1年以内の期間(対象期間)の変形労働時間制についてみていきます。
下記の時間が時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります。
【1日の法定労働時間外労働】
→1日8時間を超える労働時間を定めている日はその定めている時間数、それ以外の日は8時間をそれぞれ超えて労働した時間
【1週の法定労働時間外労働】
→1週40時間※を超える時間を定めている週はその定めている時間数、それ以外の週は1週40時間※を超えて労働した時間
※変形期間を採用している場合、特例対象事業は1週44時間
【変形・対象期間の法定労働時間外労働】
→変形・対象期間の法定労働時間総枠を超えて労働した時間
〈法定労働時間総枠の計算式〉
変形期間の場合:変形期間の歴日数÷7日×40時間(特例措置対象事業は44時間)
対象期間の場合:対象期間の歴日数÷7日×40時間
【算出時のポイント】
・週の時間外労働の算出では、1日の時間外労働算出時にカウントされた時間は除き、変形・対象期間の時間外労働の算出では、1日と1週の時間外労働算出時にそれぞれでカウントされた時間は除きます。
つまり、順番に、日でみて、週でみて、変形・対象期間でみることが必要になります。
・対象期間中に中途採用で入社した労働者や、退職した労働者については、対象期間より短い実際に労働をした期間でみて、平均週40時間を超えた労働時間に割増賃金が発生します。
清算期間が1箇月以内の期間と1箇月を超え3箇月以内の期間を定めた場合では扱いが異なります。
下記の時間が時間外労働となり、割増賃金の支払いが必要となります。
【清算期間が1箇月以内の期間の場合】
・清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間
〈法定労働時間総枠の計算式〉
清算期間の暦日数÷7日×1週間の法定労働時間(40時間または44時間)
【清算期間が1箇月を超え3箇月以内の期間の場合】
・1箇月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
・清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(1箇月以内の期間の計算式と同様)。週平均50時間を超えた労働時間にカウントした時間は除く。
【算出時のポイント】
・休日労働の時間数は、清算期間における総労働時間や時間外労働には含めず、別途算出が必要です。
・勤務状況把握のため予定出勤退勤時間を事前に提出させることは可能とされていますが、提出した時間と異なる時間に出勤退勤したからといって早退や欠勤、遅刻扱いにすることは原則できません。
・休日は労働が免除されている日なので、原則フレックス制は適用されないため、別途休日労働日の勤務時間に関する定めをしておく必要があります。
変形労働時間制やフレックスタイム制を導入する上で、制度によって異なる労働時間の限度や振替休日の扱いなど適正な運用方法を把握し、他の必要記載事項を含めて就業規則に記載して労使協定を締結しておくことが必要です。
柔軟な働き方に対応するため取り入れた制度であっても、間違った制度運用を行うと未払残業代の発生につながり、労使紛争に発展しかねませんので十分にご留意下さい。
ご不明な点がございましたら是非ご相談下さい。